ご覧の通り “キー” である。かつてオレが乗っていた車のものだ。
スペアキーだったんだが、引っ越しの際に紛失してしまってね。
探しものしていたら、何故か紙袋の中から黒ずんだシルバーアクセサリと一緒に出てきた。(笑)
懐かしさと共に、あの頃の色んな感情が蘇ってきたよ。
ドアを開けた瞬間に漂う欧州車特有の匂い。
シートに座りキーを回すと、瞬時に吠えるような音を出して始動するエンジン。
6207cc V8 特有のエキゾーストノートは、何度聞いても痺れる程好きだった。
納車間もない頃に女友達と広島へ行った。
オレには使い方が解らない純正ナビを、彼女があっさり使いこなしたのは今でも覚えているな。
鈴鹿サーキット(フルコース)を走らせて、周りから驚かれたのも懐かしい。
そんな楽しい思い出も辛く苦しい思い出も残ってたが、当時所有していた車たちと一緒に処分。
「いつかまた、同じ車に乗りたい」という思いだけは、今なお残っている。
毒蜘蛛2号から不調の兆しが幾つか見え始め、次回の車検までは無理かもしれないと考えていた矢先だった。
だからと言って今こんな車(キー)購入できるはずもないんだが。
だがね、後継車は遠くないうちに入手しなければならないと思っている。
同型車(毒蜘蛛2号と)のグレード違いが欲しいんだが、これがビックリする程高い。それでも色々考えて購入予定。
車と単車が生き甲斐だったオレが、それを処分せざるを得ない状況だったあの頃。(単車だけは残してある)
あの日から、歯を食いしばって懸命に生きてきた。
失ったものを嘆くのではなく、悩むのではなく、ただひたすら前を向いて。
だが、そんな生活が何年も続けば正常な自分を維持するのは困難になってくる。
そんな矢先の震災だった。
途方に暮れる能登が、正気に戻してくれた。良くも…悪くも、ね。
オレは、両手を広げて “忘れもの” を取り戻しに行くよ。